床の傾斜だけを直すという選択

能登半島地震が及ぼした影響で、
新潟を苦しめたのが、
「液状化現象」だ。
その液状化現象により、建物ごと傾いてしまった家も多い。
中には
「立っているだけで気持ち悪くなる」
「まっすぐ歩けない」
「日常生活に支障がある」
そんな声も少なくなかった。
私はこれまで、何件も沈下修正工事をしてきた。
床の傾斜を直す方法はいくつかある。
・建物本体のみ持ち上げて水平に戻す方法。
・基礎ごと持ち上げて水平に戻す方法。など。
そして、
・建物はそのままにして、床だけを水平に作り直す方法。

今回のお宅では、
お客様と相談のうえ、
「床だけを直す方法」を選択した。
理由はシンプルで、費用の問題だ。
若い世代は自立した。ご夫婦だけの暮らし。
家を建て替えるほどの、資金も気力もない。
「最低限の工事で、これまで通り生活できればそれでいい」
そのお気持ちを最優先とした。
この工法は、沈下修正工事の中では、
比較的、安価な工事に分類される。
だが、デメリットもある。
浴室やトイレ、廊下など、床をそのまま残す場合、
新しく作り直した床との境目には段差が生まれる。
ねじれるような段差。
また、建物自体が傾いたままなので、
ドア、引き戸、障子、襖などは、
少し特殊な納まりが必要になる。
仕上がりとしては、
床は水平、まっすぐ。
窓や建具は、わずかに斜め。
傾斜によっては「少し曲がって見える」状態になる。
傾斜の度合いによっては
ほとんど気にならないケースもある。

工事が終わった後、お客様は必ずこう言う。
「平らな床で寝るって、いいね(笑)」
その一言に、すべてが詰まっていると思う。
完璧に、完全に直す、修繕することだけが
我々の仕事ではないのだと思う。
暮らしを直すこと。
暮らしを取り戻すこと。
工事は正解がひとつじゃない。
大切なのは、
お客様が何を一番望んでいるのかを
丁寧に聞き取り、メリットとデメリットを説明すること。
次回は、また別の「家の傾きを直す方法」を
紹介したいと思います。
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